アオトのコゴト

ここは文字に臆病になった僕が通う診療所

「レヴェナント:蘇えりし者」を観てきた〜スーツを脱ぎ捨て、毛皮を纏ったレオ様〜

こんにちは、アオトです。昨日ですね、公開が楽しみだった「レヴェナント:蘇えりし者」をレイトショーで観てきました。すでに日本でもレオナルド・ディカプリオが彼岸のアカデミー主演男優賞を獲得したことでも大きく話題となったこの作品。ちなみにぼく、レイトショー大好き人間です。500円OFFの魅力はもちろん、日中はごったがえす梅田のシネコンでも夜になれば人影はまばらでゆっくり観れるのが好きで、よくお世話になっています。そして、結婚して初のひとり映画でした。

 

あらすじとかは書きません。感想だけ。

 

まずは、映像の美しさ。人間の小ささを嫌というほど知らしめる雪山、連なる山脈。足元からパンされて映る木々の営み。時に美しく時に残酷さを纏った表情豊かな空。その映像の連続を観れば、いかにスタッフが尽力を注いだ作品かわかります。そのなかでも注目したのは「水」の扱い。

「静」の水たまり。木の葉から滴る「微動」の雫。勢いよく流れる「動」の河水。またときに水は「雪」や「氷」に形を変えます。それらは人を嘲笑い、ときには潤し、ときになぎ倒し、ときに手を差し伸べる。様々なシュチュエーションで展開される「水」の描写、そのレパートリーの多さにただただ感嘆しました。

いやいや、「水・空・緑・大地」って芸術作品のテーマで使い古されてるじゃん。テッパンじゃん。と思う方は、観ない方がいいです。というか、映画を観なくていいと思います。お疲れさまでした。ぼくは「レヴェナント」を観て、改めて「水」というステレオタイプのツールがいかに新鮮で美しいかということを再認識させられました。そう思えただけでもこの作品を観てよかったと思ったし、自分の作品にもいつか組み込んでいきたいと思いました。

風景と自然の描写だけでもお腹いっぱいだけど、キャストにも目を向けなきゃね。

主演はいわずもがなのレオナルド・ディカプリオ。そういえばディカプリオの作品ってどれぐらい観たっけーっと思い返していると、

タイタニック

インセプション

シャッターアイランド

「ジャンゴ」

「華麗なるギャッツビー」

ぐらいのもんで、どちらかといえば「観たい映画のたまたま主演もしくは助演」って感じです。「生粋のレオ様ファン」には申し訳ない体たらくです。でも、好きですよ。「もうキャ〜キャ〜言われたかねえんだよ、おれはよお!」感むきだしで、世論に歯向かって演じているレオ様が好きなのです。

 

今回の作品はそれが顕著、というかモロ。「スマートでキュートでおしゃれ」のレッテルを全部ぶん投げた体当たり演技でした。そりゃアカデミーの審査員も大手を広げて賞の壇上に迎え入れたのもうなずける仕上がり。

はてな界のレジェンド、伊藤計劃氏が生前「ブラッド・ダイヤモンド」のディカプリオを「あのベビーフェイスに髭面がどうにも…」と納得のいっていない発言をしていたのですが(※でもレビュー終盤でしっかり合点がいっておられた)、もうベビーフェイスを覆い尽くすヒゲ、ヒゲ、ヒゲもじゃのロングヘアー。ちゃんと様になってましたよ。40歳を超えた男の渋みと凄みが容姿を上回る迫力を呈していました。数少ないぼくが観たディカプリオ作品では一番カッコよかったです。

 

ただなあ…ただなあ……声がなあ。

 

高い。

声可愛すぎるんだよな。

 

そこが少し残念。もっとドスの効いた声をレオ様! 容姿の凄みをもう少し声帯に! いや待てよ。逆にそれが、あの過酷極まりない山岳地帯においての人間の空虚さを増幅させる装置になっていた、ってこともあるんだけど…。でもそれにしても…。うーん、惜しい。

同じことを感じた人がいたなら、ぼくは両の手で強い握手がしたい。ぼくの要望はそれぐらいです。

 

また、そんな彼の脇を固める俳優陣には「アバウト・タイム」主演のドーナル・グリーソン(おおー!)、「メイズ・ランナー」のウィル・ポールター(あの映画のときより断然良かった!)、「マッドマックス〜怒りのデスロード」主演のトム・ハーディー(このタイミングでヒール役かよ! 熱すぎる!)などなど。今映画界を引っ張っていって欲しい俳優さんたちが出演していて、誰得? ってくれいボク得でした。

 

そして、これから観ようと思う方は心して観ていただきたい。ぼくね、正直に言うと昨日は寝不足で鑑賞前に異常な眠気に襲われていたんです。「ヤベ、これ寝ちまうパターンだわ」と諦めかけていたんですけど、いざ始まると寝る余裕が1ミリもなかったです。というか緊迫した展開に緊張しまくりで、上映中ずっと力が入っていたんでしょう。映画館を出てあと耳の裏がつってました(笑)。あと、"レオ様の映画は絶対見なきゃ死んじゃう"病の方、特に女性の方も気をつけて。自然描写は美しいですが、そうとうグロテスクなシーンが続きますので。ご容赦ください。この点でぼくは、「血とか暴力とか生々しい描写苦手の奥さんと来なくて良かった」と思ったんですから。

いやー、なんかすごいものを観せられた、魅せられたあっという間の154分でした。映画館で観てよかった。だって、1日たった今日もまだ興奮が冷め止まぬ状態なんですもの。こんなの久しぶりですわ。

 

最後に。作中、何度も天に召されかけるレオ様演じるグラスですが(だからこの邦題かよ笑)、あるシーンで教会の廃墟と思しき場所にグラスが降り立ちます。頭上で揺れる鐘、点在する壊れた壁、そして水溜り。あれこれってタルコフスキーの「ノスタルジア」のオマージュじゃないのかしらん。と、ちょっとしたアハ体験がありましたとさ。